今までブログでは『職人』についてあまり書いたことがございませんが、今日は少し書かせていただきたいと思います。
いま当店には、一人の見習い生がいます。
見習いを初めてまもなく2年になります。
先日まで、週に一度日を決めて、ズボン職人にマンツーマンで縫製を叩き込んでもらっていました。
針の運針から習い始め、仮縫い、裁断も覚えながら、ようやくズボン・ベストが縫えるようになってきました。
その指導を担当をしてもらったのは、ズボンの縫製一筋、当店No.1のズボン職人です。
彼が習い始めた頃、たまたまその場に居合わせた私の耳にズシンとくる言葉が飛び込んできました。
見習いの彼が少し雑な仕事をしてしまったのでしょう、そんな彼に普段は物静かな職人が、
「こんなやり方でええと思うか?」
「あんた、『過去には戻れない』という言葉知ってるか?」
「自分がやった仕事はずっと残るんやで」
「一度仕上げてしまったら後へは戻れへん」
「・・・さぁ、やり直そう」
私はこの職人をとても尊敬しています。もちろん素晴らしい仕事をするからでもありますが、それだけではなく、仕事に対する姿勢が素晴らしいからです。
いい仕事をする職人は、指先が器用だとか、センスがいいからといった技術的な部分だけを見られがちですが、それだけでは決してありません。間違いなく素晴らしい職人は魂を込めて仕事をしています。技術の源になっているのは間違いなく『職人魂』なのです。
大袈裟に聞こえますか?でも実際に縫製をしている職人の姿を見ればきっと同じことを感じていただけると思います。
自分の仕事に厳しく取り組み、一切の妥協を許さない・・・・そんな職人の思いが修行中の彼にどれだけ伝わっているか・・・
今この業界では熟練職人が減っています。若手の職人を育てるのはこの業界の急務です。幸いなことに若手の職人を育てる気運もあり、縫製職人を目指す若い方もふえてきています。
嬉しいことではありますが、先を急ぐばかり「技術の習得」ばかりに目がいっているようにも思います。
彼にはその『職人魂』を感じとり、「技術以外の大切なものも受け継いでいって欲しい」と強く思いました。
極めてこそ職人。でもその職人はいつも口癖のように言っています、
「どれだけやっても、いくらでも学ぶことが出てくるわ。一生修行ですわ。」と。
2014年09月16日
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