2012年02月22日

2012お仕立説明 Part1『一般的なオーダースーツのシステム概要』

『パターン』『イージー』『フル』・・・
仕立の説明に必ず付いてくるこの言葉。
一体どう違うのでしょうか?
システムを理解し、安心してオーダーしていただけるよう、その違いと注意事項をご説明させていただきます。

【一般的なオーダースーツのシステム概要】
細かなお仕立説明をさせていただ前に、どうしても先にご説明させていただかなければいけないことがございます。

それは、分かったようで分かりにくい、オーダーシステムの種別である『パターン』『イージー』『フル』の3つの区分けについてです。

日頃、お仕立ての説明をさせていただいていると、お客様からよく「これはイージーオーダーですか?」「フルオーダーですか?」とお尋ねを受けます。しかしご説明をさせていただいている最中に、「あれっ、どうも説明が上手く伝わらないなぁ」と思う事がしばしばあります。お客様が考える『イージーオーダー』や『フルオーダー』の内容と、店側との間にズレがあり話が噛み合ないのです。

”商品の特徴や仕様を説明する言葉”に明確な定義がある場合は、誰から説明を受けてもその内容は同じで、問題は無いのですが、オーダースーツの場合、困った事に、仕立ての説明に必ずと言っていいほど使われる『パターンオーダー』『イージーオーダー』『フルオーダー』という言葉の定義が、お店によって少しづつ違っているのです。

例えば電化製品などでは、新しい機能や仕様を説明する言葉は基本的にどのメーカーも同じで、カタログや店頭の説明で容易に比較検討することが出来ます。

ところが、オーダースーツの説明においては、仕立てを説明する言葉に明確な定義が無く、また曖昧だったりすることがあり、お客様が考える仕立の内容と、店側が定義している仕立の内容とにズレがある場合があるのです。これは本当に困った問題なのですが、実際、作り始めて「あれっ、何か話が違うぞ?」と後から気づくケースもあります。

それではその3つの区分けである、『パターンオーダー』『イージーオーダー』『フルオーダー』の一般的な定義をご説明させていただきます。

『パターンオーダー』:一番既製品に近いオーダーで、出来上がったサンプルを羽織り、袖丈や着丈、お腹回りのサイズ調整を行います。体型補正範囲や箇所にもある程度の制約があるスタイル重視のオーダーです。既製服をサイズ調整して買う感覚に近いですが、着丈を調整した場合など、フロント釦やポケット位置の調整も同時に行いますので、既製服のサイズ調整とは異なります。

『イージーオーダー』:パターンオーダーより修正箇所や体型補正の許容範囲が広く、お客様のご要望に対する自由度が広がるのが一般的ですが、お店のシステムによって出来る範囲・項目が違いますので、A店ではできたのにB店ではできない、といったことがおこります。ただし『仮縫い』をすることが出来ないのが一般的です。

『フルオーダー』:『フル』ですから、テーラード的カテゴリーのものなら殆どの物が作れ、デザイン・シルエット・ディテールなど、全てお客様のご要望をお聞きしてお作りすることが出来るオーダーシステムを一般的に『フルオーダー』と表現されています。『フルオーダー』は『ハンドメイド』(職人による縫製仕立)との組み合わせが一般的で、マシンメイドの『フルオーダー』というのあまり多くないと思います。もしマシンメイドで『フルオーダー』というのであれば、どの部分を指して『フル』なのかをしっかり確かめる必要があります。

以上、3つのシステムの大まかな説明をさせていただきましたが、この中で『イージーオーダー』は、お店ごとに内容の巾があり要注意です。『フルオーダー』に近い『イージーオーダー』(比較的自由度の高いオーダーシステム)なら特に問題はないのですが、『パターンオーダー』寄りの『イージーオーダー』は、できること、できないことがはっきりしていますので、注文する前にしっかり説明を聞いてオーダーする必要があります。

これ以外にも、縫製工場に全てを任せることなくお店が主体となって独自のオーダーシステムを構築しているテーラーもあります。このような場合は上記の範疇にピタッと収まらないので、お店でその特徴をしっかり聞きましょう!

最後に『フルオーダー』の縫製仕様において注意しなければいけないことがありますので、その一例を挙げさせていただきます。お店の曖昧な表現によってお客様に誤解を与えてしまうケースです。

先ほど『フルオーダー』は『ハンドメイド』との組み合わせが一般的と書きましたが、お店によっては『フルハンドメイド』という言葉を使う場合もあります。一般のお客様が『フルハンドメイド』という言葉からイメージされるのは文字通り『フルハンド縫い=総手縫い』と考えられるお客様もおられるでしょう。そうすると一切ミシンを使わない縫製ということになります。

しかし実際は『ミシンを一切使わない総手縫い』をこなす縫製職人はかなり希少な存在で、注文を受けるテーラーはかなり少ないのではと思います。「総手縫いのスーツを作りたくて注文したのにそうじゃなかった」というケースもあるやも知れませんので、もし本当に『フルハンドメイドの総手縫い』の縫製をご希望であれば、ご注文されるテーラーに完全に手縫いだけなのかを慎重に聞いた方がいいと思います。

ちなみに、『フルハンドメイドの総手縫い』の縫製は時間もかかり縫製の仕立代は一般的にかなり高額になりますので、生地代を含んだ仕立て上がり価格も当然高額になります。

一般的には『フルオーダー』は『ハンドメイド』であっても『フルハンドメイドの総手縫い』ではないとお考えいただいた方が一般的かと思います。全くミシンを使わない手針だけの縫製は、現代においては希少で特別な縫製になってしまいました。

ちなみに当店が通常ご注文をお受けしている『ロイヤル縫製』は、フルオーダー職人が1着を最初から最後まで一人で縫い上げる『丸縫い』ですが『総手縫い』ではありません。ベテランの縫製職人が手縫いと昔ながらの足踏みミシンと重たいアイロン等でクセ取りを行いながらお仕立てしている”ハンドメイドのフルオーダー”です。

以上、一般的な『パターンオーダー』『イージーオーダー』『フルオーダー』の大まかなシステムの概要をご説明させていただきました。
posted by Tailor KATSURA at 14:20| Comment(2) | TrackBack(0) | クラス別お仕立説明
この記事へのコメント
漫画で興味を持ち,少し勉強させていただこうかと.
"マシンメイドで『フルオーダー』というのであれば・・・"と,"一般的には『フルオーダー』は『ハンドメイド』であっても『フルハンドメイドの総手縫い』ではない"で混乱しています.
"マシンメイド"と"ミシンを使った作業"は同意ですか?
これなら"マシンメイド"="ミシンを使った作業"<>"手縫い"となり"マシンメイドで『フルオーダー』"の一文が理解できなくなります(後ろでハンドメイドでもミシンは使うとしている).
個人的には,"マシンメイド"="CAMのようなコンピューターによる機械作業"であれば,全文整合するのですが,たぶん違うような気が???
 業界的には"ハンドメイド"="手縫い"が一般常識ですが,一部ミシンも使いますよ程度の理解でいいのでしょうか?
Posted by CHF at 2013年07月24日 11:28
CHFさん、コメントありがとうございます。

CHFさんが最後に仰っているお考えでよろしいかと思います。

マシンメイドは様々な行程に特化した専用ミシンを使います。
職人が時間をかけて作る行程を、わずか数秒で作り上げるミシンもございます。
ハンドメイドもミシンを使いますが主には直線ミシンで、それはマシンというよりは職人の道具といった感覚です。
またマシンメイドとハンドメイドではミシンを使う割合が全然違います。

総手縫いに関しましては、全て手縫いという事になりますので、
全くミシンを使っていないということになります。

この件はお店によっても解釈の違いがあり、大変難しい部分でございます。

私の説明が不十分のためご迷惑をおかけし申し訳ございません。

マシンメイド、ハンドメイド、総手縫い等に関しまして、改めてまとめ直す必要を感じております。
ブログに書かせていただこうと思っておりますのでしばらくお時間いただきたいと思います。
Posted by かつ店 at 2013年07月26日 11:26
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