2012年04月08日

2012お仕立説明 Part5『フルオーダーの難しさ』

時間と費用をかけて作る『フルオーダー』。
当然出来上がりの期待度は高くなると思います。
しかし実際にはなかなか思うようなスーツが出来ないことも・・・
そこには『フルオーダー』の自由さ故の難しさもあるのです。

オーダースーツを作るなら一度は『フルオーダー』に挑戦してみたいものです。しかし「フルオーダーは難しい」というお客様の声を耳にするのも確かです。実はお客様が「難しい!」と感じるその原因は、『フルオーダー』特有のシステムの中にあるのです・・・

しかしご安心下さい!! ここで言う『難しさ』とは、『全てを可能な限り思い通りに作る難しさ』という意味で、”イメージと全く違うものが出来上がってくる”ということではございません(笑)。また「フルオーダーは難しいぞ!」と煽るものでもございません!!知っていれば作るときの”お守り代わりになります”くらいの感じで読んでいただければと思います。

【フルオーダーの難しさ】
『フルオーダー』に限らず、オーダースーツをお作りする上で、最も重要でかつ難しいのが、『お客様の思い描いたスーツをイメージ通りに仕立て上げる』ことだと思います。

時間と費用をかけて作るオーダースーツですから、お客様の期待度は当然高くなります。しかし実際にオーダースーツを体験された皆様はいかがだったでしょうか?出来上がりに十分満足されましたか?100%満足は無理だとしても「また作りたい!」と思える納得出来るスーツが出来上がってきましたか?

実は、『パターン』『イージー』『フル』オーダーの中で、最も自由度が高く思い通りに作れる『フルオーダー』においても、イメージ通りに出来上がらないこともあるのです。

「それはおかしいじゃないか!」とお客様の困惑した声が聞こえてきそうですね。しかし『フルオーダー』だから難しいという部分が存在するのもまた事実なのです。

決して「フルオーダーは難しいものだ!」と強迫観念を植え付けているのではありませんよ(笑)。フルオーダーのそう言った面もご理解いただいていると、事前に対処することもでき、より良い物をお作りいただけるのではないかと言う思いから書かせていただいています。

例えば、”イメージ通り”という点だけをとれば、思い描く理想のイメージの服を出来上がった形(既製服)で見つけることが、一番納得のいく”イメージ通り”の服ではないでしょうか。

しかし実際には、時間をかけてイメージ通りの服を探しきることが難しいこともあり、「少々お金がかかってもオーダーで作ればそれに近いものが出来るだろう」と思って作られるのが、オーダースーツで作られる一つ理由だと思います。

さらに「どうせ作るならフルオーダーの方がもっといいスーツが出来上がるに違いない」という思いから『フルオーダー』で作られる方も多いと思います。

しかし出来上がって見ると「どこかイメージが違う・・・」「ちゃんと伝えたはずなのに・・・」とうことがあります。

では何故『フルオーダー』においてに、イメージ通りに出来上がらないといったことになるのでしょうか?

それは一言で言うとスーツ作りにおいて『技術力ある』ということと、『感性がある』ということは別物ということなのです。

お客様の思い描くスーツをテーラーが理解し、形に仕上げていく作業は、実は『感性』によるものが大きいのです。もちろん『技術力』は絶対に必要な条件ですが、それ以外にお客様のお考えを的確に捉える『感性』が必要となってきます。

フルオーダーでイメージ通りに出来上がらないのは、そのテーラーには『技術力』はあるけれども、お客様の思いを十分に汲み取ることができなかった場合が多いのです。

パターンオーダーやイージーオーダーなどの工場生産の場合では、もともとご注文の段階で制限がありますので、逆にそこから大きくイメージが外れるということも少なくなります。また一旦縫製にかかると縫製ラインでは機械的に流れだし、良くも悪しきも縫い手の意思が入りません。それがライン生産の特徴です。しかし『フルオーダー』の場合自由な部分が多いだけに、そこに携わる人間の感性が微妙に影響をしてきます。

現在の分業化されているテーラーの『フルオーダー』は、スーツが出来上がるまでに複数の人間が携わります。(今では最初から最後まで一人でこなすテーラーは少ないです)

お客様から注文を聞く営業。営業からスーツの仕様を聞いてパターンを作成するパターンナー(裁断士)。そして裁断補正されたものを縫い上げる縫製職人。一般的な人員構成と大まかな仕事の流れです。

まず営業がお客様の思いを的確にとらえ、パターンナーにしっかりお客様のご要望を説明し、パターンナーが的確にパターンを作成する、そして最後は縫製職人がお客様のイメージ通りに縫い上げていく。これは理想的流れです。

しかし先ほども書きましたように、”ゼロ”から作り上げ、自由がきき、全てが手作業で進められる『フルオーダー』では作り手側の思いが入ることもあり、お客様のイメージから僅かながらズレてします場合もあるのです。

そしてそのズレをいかに少なくし、お客様の思い描くスーツにどれだけ近づけていくか、これが『フルオーダー』におけるテーラーの重要な課題の一つなのです。

テーラーには技術力があり、お客様の様々なご要望を形にしていくことが出来きます。そのために大切なのは、お客様とお店とがいかにイメージを共有するかということなのです。

次回に続く。
posted by Tailor KATSURA at 13:28| Comment(0) | TrackBack(0) | クラス別お仕立説明
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