本来はイギリスやイタリアの老舗テーラーが、伝統として受け継いできたパターン(スタイル)であったり縫製仕様であったり考え方であったりと、たとえお客様の意向であっても「それはちょっと譲れません」的な保守的な要素であったりするのですが、いま日本において言われている『ハウススタイル』というのは、スタイリングを中心に言われているように思われます。
お世話になっている同じ業界の先生が、イタリアの某有名テーラーで仮縫いをした時のこと、あまりのアームホールの小ささに窮屈感を覚え、「もっと大きくして欲しい」と要望したところ、「それは出来ない!この店のスタイルを変えることは出来ないので、大きくすることは出来ない」と断られたそうです。かなり食い下がったそうですが、全く受け付けてもらえなかったそうです。納品後ご自身で縫い直されたそうです(笑)。
プライドのあるそのテーラーとしては「当店のスタイル、考え方を変えることは出来ません。嫌なら他店へどうぞ」といった感じでしょうか。
程度の差こそあれ、『ハウススタイル』とはそういうものだと思います。
しかし日本でこれを余り露骨にやっちゃうとマズいですが(笑)。
『ハウススタイル』を打ち出しているテーラーのスタイリングには特徴があり、そのデザインに特化している分、そのスタイルに関しては完成度が高いと言えます。しかしスタイリングと生地の特性がリンクしている場合もあり、好みの生地で作ることが出来なかったり、その逆に好みのスタイリングで作ることが出来なかったりすることもあります。
お客様がスタイルに惚れ込んで作る分には『ハウススタイル』がハッキリしているというのは分かりやすくていいと思います。
ただ、余りそのスタイルの特徴がはっきりしていると、「××のお店のスーツだ」とすぐに分かってしまい、そのことを好む方と嫌う方に分かれるところでもあります。
日本における『ハウススタイル』とは、『そのお店が打ち出している、中心となるオリジナルデザイン』といった感じでしょうか。
2013年03月08日
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